すでに述べてきたように、幼児期の夜尿は生理的なものであり、学童期から思春期に かけての夜尿は、神経・内分泌系の発達障害が基盤となっていることが多い。 したがって夜尿症は、自然経過においても思春期徴候を迎える頃になると改善することが多い。 しかし、筆者の夜尿症外来での経験では、10才以降に受診した夜尿症患者の内、15才以降の 例が約10 %を占めており、必ずしも自然治癒しない例があることに留意しなければならない。 また自然経過を待つと、自立するのに時間がかかり、宿泊行事や地域のキャンプ、あるいは 家族旅行等の宿泊時に必要以上のストレスを受けることになる。 従って学童期の夜尿については、なるべく早期に自立できるように治療していくことが、その後の 人格形成の上でも大切なことと考えている。 夜尿の悩みは、本人ならびに家族にしか理解できない深刻なものである。宿泊行事等の不安は もとより、夜尿があるために自殺を企図したり、結婚をあきらめたり、就職もできずに悶々として いたり、思春期以降の例にいたっては極めて深刻である。 くれぐれも夜尿ぐらいでと軽くみないで、親子の悩みをしっかりと受けとめ、適切な診断・生活指導・ 薬物療法を行っていただければ幸いである。 尚、夜尿症に関する専門学会として「日本夜尿症学会」がある。 夜尿症に関心をもつ小児科医、泌尿器科医、臨床心理士、看護婦、保健婦等が多数会員と なっており、年1回の学術集会を開催し、機関誌「夜尿症研究」を発行している。 学会事務局:埼玉県立小児医療センター腎臓科 入会希望はFAX にて(FAX 048-758-1818) |